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共産党第三王朝の行く末

中国が激動の時代に突入しつつある中、その将来像はもうある程度は見えてきた。
次の10年以内に中国はその方向性を大きく変えてくるだろう。

1.経済の停滞と社会不安の激化。
 イノベーションの欠如と政府の公共事業への過度な依存から、中国の経済成長は急激に鈍化している。ハイコスト、ハイリスク、ローリターンという見離されて当然の中国経済は、深刻な経済不安に直面する。iPhoneはじめ組立のアウトソーシングで有名な鴻海は、中国工場のロボット化に加え、インドでの100万人雇用計画を打ち出した。中国人労働者の生活空間は着実に狭まってゆく。
 
 ローコストと豊富な労働力に裏打ちされた過去の経済モデルは、農村からの出稼ぎ労働者によって支えられていた。元々、中国の農村は生産性が低く、過剰な人口を抱えていたから余剰労働力が都市部に出ることは問題なかった。しかし、彼ら流動人口が今や2億数千万という凄まじい数に膨れ上がった挙句、都市への同化策もいまだ本格化してはいない。この状況下で、農民工が仕事を失った場合、流民の群れは中国史ではお約束の反乱勢力となるだろう。中国政府は、単に治安悪化というレベルに留まらない深刻なリスクに対応しなければならない。


2.疑似全体主義体制への体制移行。
 習近平政権が、胡錦濤政権よりも閉鎖的、内向きで、国際社会に馴染まない性質を持つことは発足早々に明らかであった。
 時間が経つにつれ、その傾向はますます顕著となり、国際社会、特に自由主義圏と共通の価値観を持たないことが各国に広く認識されつつある。
 習近平らにとって、偉大な中華文明、それを導く共産党の力を認めない国際社会は潜在的に敵である。力押しでどうにもならない相手は、現政権にとって理解できない相手であり、自分たちへの敵意と対抗心に満ちているに違いないと信じるだろう。また、人権派や民主派のような自由主義圏の価値観を認める中国国内の勢力は、危険な裏切者であり弾圧する必要があると認識しているだろう。習らには新たな価値観を打ち出すことはできないから、力で圧す以外の行動パターンがない。今後、更に抑圧的で全体主義的な社会に変貌してゆくだろう。


3.改革開放路線の放棄。
 今の時点で断定するのはとても厳しいが、実は私は習政権が改革開放路線そのものを放棄するだろうと思っている。
 修士論文を書いていたころを思い出すが、開発独裁体制は経済成長を加速させることで、政治への不満をそらす体制である。
 しかし、政治の問題は解決されるわけではなく、単に先送りされているだけに過ぎないから、経済成長が保証されなくなると反体制運動が復活することになる。それに対して、中国政府は言葉や次の理想を提示することで対話をすることができない。中国政府としては自由な価値観が海外から流れ込み続けることに耐えられないだろう。言論を更に抑圧し、外国人が自由に出入りすることを嫌がるようになるだろう。中国人が自由に海外へと出て知見を広め、自分たちの魅力の無さを知られるのも好まないだろう。
2の疑似全体主義化と同時並行で進むのは、必然的に海外との接触を減らす政策となるはずである。


リアル北斗の拳が成就するとき。
習近平は強権的な独裁政治によって腐敗を打破するという手法をウリにしてきた。自由な金融体制を否定し、株式市場の信用を崩壊させた。損失を出した投資家の訴訟を事前に防ぐために人権派の弁護士を弾圧した。中国政府はこれらの全てを「安定のため」として認識しているだろう。この安定とは、「自分たちの支配体制を維持すること」と同義である。仮にそう思っていなくても、力によってしか統率することができない社会において、最大の力を持っている共産党にはそれ以外の道は取れない。

安定のためといいながら、他者の財産を差し押さえ、批判を許さない、異議の申し立てを認めない権力はすでに腐敗の塊となっているのである。腐敗を断固潰すために、強権を行使することは自己矛盾に満ちている。脳筋の習近平にはそれを理解することはできまい。自己の考え以外を認められないその思考回路は、まさに中国人が共有する中華思想以外の何物でもない。


P.S.
 ちょっと面白いことが起きている。トルコでウイグルの弾圧に反対する反中デモがあったが、これは一部の識者に数年前から予測されていた流れである。ウイグルから中央アジアを経てトルコを結ぶ旧シルクロードには、グレータートルコとでもいうべきつながりがある(トルコは突厥にルーツがあるとも言われている)。ウイグルへの弾圧は中央アジアのトルコつながりを重視し始めているトルコの反発を呼ぶだろうという話があり、しばらくは私も注視していたが、なかなか伝播する様子がないので最近は頭の片隅に追いやっていた。どうやらユーラシアを数年かけて横切り、ついにトルコまで伝わったようである。
 反米に熱心であったイスラム過激派が、中国を本格的に敵と見なし始めるかどうか、再び注意して観察する時期が来たようである。

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テーマ : 中国
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tag : チャイナリスク 中国政治 中国社会 リバタリアン

信用を失い続ける中国

2008年に続き二度目の株価暴落に直面している中国。早々に記事をアップしたかったのだが、仕事に追われたり、人に会ったり、ねこの耳を掃除したりと、あまりの忙しさで死にかけてた。このブログは速報性を売りにしてはいないので、まあいいやと開き直りつつ、株価の暴落と中国政府のなりふり構わぬ対応が何を意味しているのかを考えてみよう。

1.習近平政権はやはり脳筋。
 いい加減くどいわと思うかもしれないが、この結論については自分の中で完全に疑問がなくなった。習は普通の中国人の成金おっさんとまったく同じメンタリティを持っている。胡錦濤のような知的エリートという側面は皆無である。下落する株価に対して彼が取った政策は、自由な金融システムの完全否定である。売買停止銘柄が全体の半分を超えることを許容し、資本を持つ企業に株を買い支えるよう命令し、空売り規制(というより弾圧)をかける彼は、自由主義経済に改革開放路線に真っ向から歯向かっている。鄧小平のレジームを踏襲する気がなく、共産党第三王朝を打ち立てようとしているという見立ては、やはり間違っていなかったのだ。

2.中国の金融センター化計画は破たんした。
 上海を香港を超える金融センターとするプランは胡錦濤政権のころから推進されていた。資本は情報に対して非常に敏感なセンサーを張ることを必要とする。しかし、それは権威主義体制、独裁国家には本質的に欠けているものであるから、私は実現不可能であると見ていたが、習政権はその予想よりもはるかに抑圧的な体制へと移行しつつある。政府が気に入らないからという理由で売買停止という名の資本凍結がなされるような社会が金融センターになることはあり得ないのである。
 どんな人間が自分の資本を凍結されることを望むというのか。習政権はバブル崩壊を一時的に逃れたようにも見えるが、その代償はまともな(短期的投機でない)資本の中国投資が自殺行為に等しいことを世界中に宣伝してしまったのである。脳筋政府の気まぐれで資本を凍結されるというリスクは、いかなる投資においても正当化することが不可能である。

3.内政の混乱につながるか。
 これはちょっと判断が難しいが、特に地方都市では内政の混乱につながる可能性が十分にあるだろう。中国の投資家は多くのメディアに取り上げられている通り、まったく成熟しておらず素人である。年率60%リターンの元本保証などという詐欺丸出しの企業が、大都市の駅前で通行人をひっかけ、融資の担保は複数の金融機関で重複しており、それを見抜けないほど金融機関の審査能力はずさんである(私は実際にそういう嘘担保で金融機関から大きな融資を受けている人物を複数知っている)。シャドーバンクや高利貸しの暗躍とハイリスクぶりは、昨年、一昨年にも大きく取り上げられてきた。
 さて、では今回の急激な値動きと売買停止措置によって、なぜ内政が混乱するのであろうか。一つには株に突っ込んだ資本が、元々別の負債返済用の資本(あるいは中国では非常に一般的である借金を投資に回しているケース)であった場合、売買停止措置によってキャッシュが完全にショートし、売買が再開された時にはいくらでスタートするのかも分からない株式(株投資の経験がある人は知っているだろうが、売買停止後の再開時には上がるにしろ下がるにしろ、価格は大きく動いたところからスターとすることが多い)だけが名目上、手元にあるだけである。こうした人々は、事実上一時的に取り上げられた資本を目先の支払いのために必要としている。彼らがキャッシュの確保を求めてひと悶着を起こすことは大いにあり得ることだろう。
 もう一つには、信用取引による株式投資で大きな損失を出した投資家(例え株価が戻るとしても、一時的にでも株価が下がれば強制退場をくらう仕組みなので、虎の子を失った投資家は非常に多いはずである)が、自己責任の原則を棚上げし、当局や投資した企業に八つ当たり、責任転嫁、逆恨みする事例は必ず出てくるはずである。特にここ数年は「報復社会」という反社会テロが中国ではブームとなっている。今回の事例は社会に八つ当たりを仕掛ける格好の口実となるだろう。

4.更に活力を失う民間。
 ただでさえイノベーションに欠け、政府の動向ばかりを気にする中国社会が、今回の事件をきっかけに更なる政府依存、反自由主義的風潮に染まることは必至である。ある意味では社会が荒れ活力の衰退が進むため、政府に対抗する力は更に失われると見ることもできよう。より権威主義的で政府の支配が社会を覆う専制国家への道筋が強化されるかもしれない。反社会テロの1000や2000が起きたところで、政府そのものが倒れるわけではないからだ。

5.排外主義の強化。
 こうした状況の中、中国政府が仕掛けてくるプロパガンダ、世論誘導は見え透いている。それは空売りは海外の投機家が仕掛けた経済戦争、金融犯罪と喧伝し、愚民の不満を他国へと転化することだ。すでに一部はそう宣伝されている。ガス抜きのためにアメリカや日本の手先を懲罰するなどと言い、フィリピンあたりに軍事的冒険を試みかねない。中国の愚民は残念ながら、そうした我々にはあまりにも見え透いたプロパガンダに嬉々として便乗するであろうから。
 いずれにしても、改革開放路線は終わりを告げることになるだろう。鄧小平レジームの終焉と自由主義文明への不適応(著書で述べたように、中国文明は自由主義文明に本質的に適応できない)こそは、習近平政権を特徴づけるものとなるだろう。管理人は予言を聞くことも語ることも嫌うが、過去、幾人かの友人には以下のように告げていた。「習近平政権発足後の10年は、過去10年の中国の延長線上にはない。まったく違う路線へ進むことになるだろう」と。なるほど、自分の予測は当たっていた。しかし、現実の変化する速度は、自分の想像よりもずっと急激なものとなりそうである。

一自由主義者としては、中国にはこのまま分かりやすい専制国家という悪役を演じてもらい、自由主義圏の協力と繁栄の糧となってもらいたい。そして、過去に一比較政治学者を志した者としては、専制支配の崩壊と崩壊後の秩序再建を生きている間に観察し、記録に残すことができれば、自分の人生はまさにそのためこにこそあったと確信できるであろう。

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