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信用を失い続ける中国

2008年に続き二度目の株価暴落に直面している中国。早々に記事をアップしたかったのだが、仕事に追われたり、人に会ったり、ねこの耳を掃除したりと、あまりの忙しさで死にかけてた。このブログは速報性を売りにしてはいないので、まあいいやと開き直りつつ、株価の暴落と中国政府のなりふり構わぬ対応が何を意味しているのかを考えてみよう。

1.習近平政権はやはり脳筋。
 いい加減くどいわと思うかもしれないが、この結論については自分の中で完全に疑問がなくなった。習は普通の中国人の成金おっさんとまったく同じメンタリティを持っている。胡錦濤のような知的エリートという側面は皆無である。下落する株価に対して彼が取った政策は、自由な金融システムの完全否定である。売買停止銘柄が全体の半分を超えることを許容し、資本を持つ企業に株を買い支えるよう命令し、空売り規制(というより弾圧)をかける彼は、自由主義経済に改革開放路線に真っ向から歯向かっている。鄧小平のレジームを踏襲する気がなく、共産党第三王朝を打ち立てようとしているという見立ては、やはり間違っていなかったのだ。

2.中国の金融センター化計画は破たんした。
 上海を香港を超える金融センターとするプランは胡錦濤政権のころから推進されていた。資本は情報に対して非常に敏感なセンサーを張ることを必要とする。しかし、それは権威主義体制、独裁国家には本質的に欠けているものであるから、私は実現不可能であると見ていたが、習政権はその予想よりもはるかに抑圧的な体制へと移行しつつある。政府が気に入らないからという理由で売買停止という名の資本凍結がなされるような社会が金融センターになることはあり得ないのである。
 どんな人間が自分の資本を凍結されることを望むというのか。習政権はバブル崩壊を一時的に逃れたようにも見えるが、その代償はまともな(短期的投機でない)資本の中国投資が自殺行為に等しいことを世界中に宣伝してしまったのである。脳筋政府の気まぐれで資本を凍結されるというリスクは、いかなる投資においても正当化することが不可能である。

3.内政の混乱につながるか。
 これはちょっと判断が難しいが、特に地方都市では内政の混乱につながる可能性が十分にあるだろう。中国の投資家は多くのメディアに取り上げられている通り、まったく成熟しておらず素人である。年率60%リターンの元本保証などという詐欺丸出しの企業が、大都市の駅前で通行人をひっかけ、融資の担保は複数の金融機関で重複しており、それを見抜けないほど金融機関の審査能力はずさんである(私は実際にそういう嘘担保で金融機関から大きな融資を受けている人物を複数知っている)。シャドーバンクや高利貸しの暗躍とハイリスクぶりは、昨年、一昨年にも大きく取り上げられてきた。
 さて、では今回の急激な値動きと売買停止措置によって、なぜ内政が混乱するのであろうか。一つには株に突っ込んだ資本が、元々別の負債返済用の資本(あるいは中国では非常に一般的である借金を投資に回しているケース)であった場合、売買停止措置によってキャッシュが完全にショートし、売買が再開された時にはいくらでスタートするのかも分からない株式(株投資の経験がある人は知っているだろうが、売買停止後の再開時には上がるにしろ下がるにしろ、価格は大きく動いたところからスターとすることが多い)だけが名目上、手元にあるだけである。こうした人々は、事実上一時的に取り上げられた資本を目先の支払いのために必要としている。彼らがキャッシュの確保を求めてひと悶着を起こすことは大いにあり得ることだろう。
 もう一つには、信用取引による株式投資で大きな損失を出した投資家(例え株価が戻るとしても、一時的にでも株価が下がれば強制退場をくらう仕組みなので、虎の子を失った投資家は非常に多いはずである)が、自己責任の原則を棚上げし、当局や投資した企業に八つ当たり、責任転嫁、逆恨みする事例は必ず出てくるはずである。特にここ数年は「報復社会」という反社会テロが中国ではブームとなっている。今回の事例は社会に八つ当たりを仕掛ける格好の口実となるだろう。

4.更に活力を失う民間。
 ただでさえイノベーションに欠け、政府の動向ばかりを気にする中国社会が、今回の事件をきっかけに更なる政府依存、反自由主義的風潮に染まることは必至である。ある意味では社会が荒れ活力の衰退が進むため、政府に対抗する力は更に失われると見ることもできよう。より権威主義的で政府の支配が社会を覆う専制国家への道筋が強化されるかもしれない。反社会テロの1000や2000が起きたところで、政府そのものが倒れるわけではないからだ。

5.排外主義の強化。
 こうした状況の中、中国政府が仕掛けてくるプロパガンダ、世論誘導は見え透いている。それは空売りは海外の投機家が仕掛けた経済戦争、金融犯罪と喧伝し、愚民の不満を他国へと転化することだ。すでに一部はそう宣伝されている。ガス抜きのためにアメリカや日本の手先を懲罰するなどと言い、フィリピンあたりに軍事的冒険を試みかねない。中国の愚民は残念ながら、そうした我々にはあまりにも見え透いたプロパガンダに嬉々として便乗するであろうから。
 いずれにしても、改革開放路線は終わりを告げることになるだろう。鄧小平レジームの終焉と自由主義文明への不適応(著書で述べたように、中国文明は自由主義文明に本質的に適応できない)こそは、習近平政権を特徴づけるものとなるだろう。管理人は予言を聞くことも語ることも嫌うが、過去、幾人かの友人には以下のように告げていた。「習近平政権発足後の10年は、過去10年の中国の延長線上にはない。まったく違う路線へ進むことになるだろう」と。なるほど、自分の予測は当たっていた。しかし、現実の変化する速度は、自分の想像よりもずっと急激なものとなりそうである。

一自由主義者としては、中国にはこのまま分かりやすい専制国家という悪役を演じてもらい、自由主義圏の協力と繁栄の糧となってもらいたい。そして、過去に一比較政治学者を志した者としては、専制支配の崩壊と崩壊後の秩序再建を生きている間に観察し、記録に残すことができれば、自分の人生はまさにそのためこにこそあったと確信できるであろう。

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テーマ : 中国
ジャンル : 海外情報

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