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真の脅威。潜水艦の増強 China Naval Modernization 2

大きく注目されているにも関わらず、機能するメカニズムすら見えない対艦弾道ミサイル。
一方で目立たないながらも着々と強化が進められている分野もある。それが潜水艦部隊だ。

2004年中国海軍の漢級原潜が日本の領海を侵犯した時、その静粛性能はお話にもならず、彼らは愚かしく力不足な身の程知らずな挑戦者に過ぎなかった。漢級は簡単に探知することができ、対中抑止力は完全な優位を保っていたのである。
それから10年(そんなに昔のことだったか)。中国の潜水艦は大幅なアップデートを果たしたと見られている。

90年代以降、中国海軍は潜水艦戦力のアップデートに注力している。漢級攻撃原潜の後継艦である商(093)級が2隻、核抑止力の一翼を担う戦略原潜晋(094)級が3隻すでに実戦配備されていると言われており、更に増強が見込まれている。晋級は潜水艦としての設計も問題を抱えており、新型核ミサイル(巨浪2)も発射実験で大変な事故を起こすなど種々の問題を抱えているものの、アメリカ本土を核ミサイルの射程距離に収めることを目的としており、最終的に5隻が配備されると見込まれている。

より使い勝手のよい攻撃原潜である商級は、騒音の塊であった漢級の後継艦であり、(ソマリア)海賊への対処という名目で2013年12月から2か月にわたってインド洋を遊弋し海南島の基地まで帰還することに成功しているから、中国近海だけではなく長躯して中国のシーレーンを防衛する要としての力を蓄えている。イコール、同艦は日本など東アジアのシーレーンを脅かす能力を持っており、警戒を要する装備といえる。とはいえ、米議会の同報告書で引用された性能の目安としては、商級の性能は漢級よりマシという程度であり、「旧ソ連」のアクラやオスカーⅡほどの性能も持たないと見込まれているから、アメリカ海軍にとっては対処が困難なレベルには到達していない。(自衛隊の場合、インド洋などでの作戦能力はほとんど持たないので、日本近海ならともかく、遠洋で同艦に対処することは不可能である。)

さて、Anti-Access/Area Denial (A2AD)接近拒否、エリア拒否戦略に直接関わり、自衛隊のライバルとなるのはディーゼル潜水艦である。ディーゼル潜水艦は本質的に原子力潜水艦に勝る静粛性を持ち、知識がない人が誤解するように必ずしも原潜の下位互換ではない。また、日本は世界最強のディーゼル潜水艦保有国である(アメリカ軍はそもそもディーゼル潜水艦を保有していない)。中国海軍に配備されている旧式のディーゼル潜水艦は、自衛隊にとって敵にもならないほどの差があるが、中国はディーゼル潜のアップデートも急速に進めている。

新型と呼ぶに値するのは、ロシアから輸入しているキロ級キロ改級宋(039)級元(039A)級である。同報告書の引用によると、これら新型の中ではキロ改級が最も高性能とのことなので、中国の開発による宋級、元級はまだロシア製にも及ばない性能であり、まして自衛隊の新鋭艦(おやしお型やそうりゅう型)にはかなりの差をつけられているだろうが、問題なのはその数であり、2030年ごろには旧型艦の置き換えが終わり、新型艦のみで70隻以上が配備されているだろうと見込まれている。

海自の潜水艦配備数は16隻体制から22隻体制に増加を決定したものの、ざっと3倍もの敵潜水艦に対抗しなければならないから、性能や練度で勝っているとはいっても楽な話でないことは容易に理解できる。・・・と、一度は脅かしておくとして、中国側の直面している種々の問題も挙げておこう。中国が対抗しなければならないのは日本やアメリカだけではない。力押しで何とかなるだろうという浅はかで稚拙な戦略によって、中国は周辺国のほとんどすべてを潜在的な敵国としつつある。特に目立った動きを見せているのはベトナムであり、すでに2016年までにキロ改級6隻をロシアから購入する契約を結んでいる。これらの艦はロシアが中国に売却したものよりも、やや先進的とのことである。問題なのはベトナム海軍には潜水艦の運用ノウハウがロクにないことであったのだが、ロシアからの購入契約、6隻で20億ドルにはロシア軍によるトレーニング費用が含まれており、更に同タイプの潜水艦を運用して久しいインド海軍もベトナム海兵のトレーニングに協力することが決まっているため、ベトナム海軍の潜水艦は中国海軍にとって10年ほどで油断ならない戦力となるであろう。

これ以外にもインドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリアが潜水艦の増強計画を打ち出しており、中国の浅はかな傲慢戦略が周辺諸国による対中包囲網の形成を後押ししてくれていることがよくわかる構図となっている。無能な敵こそ最大の味方であるという真理を見事に証明してくれている中国の戦略ミスには感謝しなくてはなるまい。

絶対数を見れば3倍の敵といえども、そのうちどれくらいの割合を対日戦線に割くことができるであろうか。これは潜水艦だけにいえることではなく、周辺を仮想敵国に囲まれた国家は持てる戦力の全てを一方向に集中することなどできないのである。

また、潜水艦への対処は潜水艦にのみによってなされるものではない。自衛隊は(太平洋戦争の教訓・・・というかトラウマから)対潜作戦能力が奇形的なまでに発展しており、いまだ気が済まないと言わんばかりに、この分野を伸ばしている。P3C対潜哨戒機は韓国や中国など周辺諸国がせいぜい型遅れのタイプを10数機しか保有していないのに、世界二位の90機近くを保有し、更に近代化されたP-1も配備が始まっているから、まったく比較にならない。
潜水艦キラーである対潜ヘリも多くの護衛艦に搭載されているし、中国人が「正規空母のようだ」と反発を強めているいずも型護衛艦は、目立つだけで使い勝手の悪い正規空母などよりも、中国海軍にとってさらに性質の悪い潜水艦狩り用の中核戦力として対潜ヘリを多数運用するための艦なのである。

中国海軍の潜水艦は確かに脅威となる。しかし、幸いにして対中抑止に積極的な国家となった日本の軍備は、まさに潜水艦叩きを異常なまでに得意とする編成となっているのである。中国海軍は日本にとって比較的戦いやすい軍隊といえるだろう。

もっとも大きな穴となっているのは、以外にも対中防衛の最前線である台湾である。2013年にやっとP3Cが導入されたものの、台湾にはロクに使える潜水艦がなく、これは中国の妨害もむろんあったとえはいえ、台湾の内政上のイザコザによって近代化計画が頓挫した面が強いのである。

軍事解説その2は潜水艦、対潜戦力に特化してみた。その3は中国の空母、ステルス機、サイバー戦争などを一括して扱うこととする。とはいえ、実のところもっとも重要なのは今回の潜水艦だと思うのだけども。



    
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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

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そういや

フィリピンやブルネイも何か増強はしてないのかなとつい期待してしまいます
あと10数年でどこまで変わるか…それまでに何か小規模な紛争でも起きたら違う局面も起きるでしょうか

No title

某艦隊ゲームやってて知ったが米潜水艦にやられた数が尋常じゃないし、南洋との海路が切れて物資の不足でジリ貧になったのがあの負けの一因だもんなあ、そりゃトラウマになりますわ
でも海戦の主役は潜水艦だと思うので、これからも海自には潜水艦・対潜能力に磨きをかけてもらいたいですね

No title

>黒子さん
フィリピンもブルネイも弱小国ですからねー。
フィリピンは米軍の回帰路線を取りつつありますね。
自力では無理でも、アメリカを引き込む一助にはなりそうです。

>brさん
21世紀現在も潜水艦を有効に捕捉する手立ては限られています。
レーザー兵器や高度なデータリンクが跋扈する時代になっても、
潜水艦の時代はまだまだ続くでしょう。重視しておいて損はないですね。
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