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中国の退行

経済成長の鈍化と金融危機リスクに晒されている中国。
時間にして半分以上を残す2014年は、まだまだ多くの見どころを残している。

・地方政府の債務危機
 トップに挙げたいのはコレ。公式の範囲でも約3兆ドルにのぼる中国地方政府の債務。このうちの20%以上が今年中に返済期日を迎える。日本円にして60兆円を超える額である。これはここ数年で最大の金額であるが、加えて地方政府は歳入の伸び悩みや現象に直面している。不動産バブルがピークアウトした今年は、税金を除いた地方政府歳入のうち最も大きな額を占める「土地の開発権」販売がまったく捗っていないのである。
 こうした危機は、無名の二線級以下の都市だけでなく、天津市、杭州市などの超メジャー級の都市でも深刻な情勢である。この危機は、単にしのぐだけでは十分ではない。自力では返済できず、中央政府のあからさまな支援などでしのぐ地方政府が公になった場合、中国の先行きに対する深刻な信用不安を引き起こすであろうから、「力強さ」をもってクリアしなくてはならないのである。

・外交の破たん
 前回までに繰り返し言及してきたように、これ見よがしに力で周辺国を脅そうとする中国の稚拙な外交戦略、あるいは外交戦略の不在がそうした態度に繋がっているのかもしれないが、中国の抑圧的な態度が周辺諸国の対中警戒心を明確なものにしてくれている。今や中国の対外行動には無駄に高いコストが必要となっているから、不用意な挑発行動は、今後も彼ら自身の重荷となってくれるだろう。

・抑圧が進む社会
 ウイグル系の反乱頻発、経済状況の悪化、外交の行き詰まりなど、内憂外患を地で行く中国だが、独裁政府の不安を映すように不寛容な政策が増大している。人民の反発を恐れての贅沢禁止令。大陸への反発を強める香港市民に対する態度の硬化と抑圧化、中国での更なる情報統制はもはやGoogleへのアクセスすら許さない方針が採用された可能性がある。従来から、インターネットへの各種規制は敷かれていたし、Googleの機能も十分に使えるとは言えない状況であった。しかし、今年の天安門事件記念日である6月4日と前後して、Googleはアクセスそのものが禁止されており、6月14日の時点でも回復していないのである。これが恒久化、長期化する場合、中国本土から海外の情報へアクセスすることはかなり制限されることとなり、中国人の愚民化を一層促進することになるだろう。これは中国の弱体化ではあるが、共産党支配の強化にはつながるだろう。権力の集中を本質とする独裁国家と、権威の否定を常とするインターネットは非常に相性が悪い。

・情報戦の敗北
 国内の情報統制が進む一方、中国は海外での情報戦には敗北が続いている。対ベトナムでは船の衝突映像を繰り返し公開され、先手を打たれてきた。アジア安全保障会議(シャングリラ会合)では、中国の国防トップレベルは参加せず、聞くに堪えない八つ当たりと開き直りのスピーチしかできない副総参謀長を送ってよこした。日米をはじめとする周辺国が対中批判を行う中、他国の人間には意味不明で聞き飽きてすらいる「中国節」を披露して見事に悪役を演じてくれたことは、意気揚々と乗り込んだ安倍首相にとって、ありがたいほどであっただろう。

 情報戦でのもう一つ気になる動きが始まっている。「臓器狩り」である。ご存知の人もいるだろうが、法輪功の弾圧が始まって以来、中国では法輪功信者を対象とする「臓器狩り」が政府の手によって組織的に行われているという疑惑がある。実のところ、管理人は、著書でも触れているのだが、最低でも数万人単位の法輪功信者が臓器密売のために政府によって組織的に殺害されているという疑惑が95%以上の確率で事実であると考えている。
 まさに現代のホロコーストと呼ぶに相応しい犯罪だが、この疑惑が今後国際的にクローズアップされるようになるのではないかと考える。一つにはカナダの弁護士らが調査結果をまとめた『中国臓器狩り』が昨年発表されたこと。もう一つには、これまで疑惑にまともに回答してこなかった中国政府が、カウンターのプロパガンダを流し始めているのである。このトピックに注目が集まることは、どのように言い逃れを試みても中国のイメージ低下は必至であるから、注目が集まらないようにすることだけが唯一の逃げ道である。臓器移植、臓器提供に関わるプロパガンダを流すのは中国政府にとって得策ではない。

・統治能力と対外能力の低下
 経済政策においては何ら抜本的な対策を講じることができず、後追いの財政出動を小出しにしては時間を稼ぐ。いわば失血死へと向かうような緩慢な対策しか打てない中国政府。国内のテロ対策も大量の人員とリソースを投入している割には隙を突かれっぱなしで守勢に回る。その一方で口先だけは強硬策を訴え、抑圧的な政策を取りたがる。社会不安が増大する中、ナショナリズムを鼓舞し、敵役を作って吊し上げ、情報統制の一層の強化を図るなど、何ら原因を取り除くことに繋がらない方針しか用いることができない。挙句には他国との交渉の席では、無意味で冗長な上に事実関係をまったく無視した「中国節」のスピーチで他国をがっかりさせる。

 一体、中国政府の統治能力、外交能力はどれだけ低下しているのであろうか。国内政策では中国人同士のやり取りだから、たわごとの応酬でも構わないのかもしれないが、外交においては、他国の要求に対して、外交プロトコルを無視した「恥知らずで、くだらなく、理不尽」といった具体的な意味を何も持たないコメントを並べたり、「中国は他国を軍事力で威嚇したことはない」などと別世界の事を述べているとしか思えない見え見えのプロパガンダを振りかざしても、聴衆をウンザリさせ印象を悪くするだけである。

 実は中国人はこうした無意味なたわごとのやり取りを日常生活やビジネスの場で行っているので、そのやり取り自体には何の驚きもない。中国人らしく振る舞っているのだなと思うだけである。しかし、外交部のプロフェッショナルな外交官たちは、そうしたやり方が国際的な舞台では適切でないことを知っている。現に数年前まではこうした「中国節」を国際舞台に持ち込まないよう注意していたのである。つまり、現在国際的な場でめちゃくちゃなスピーチを披露している人々は、そうした常識を共有していないのであり、同時にそれが中国指導部に認められているということなのである。

習近平政権の上層部は、胡錦濤前政権に比して教養水準が目に見えて低く、中国社会により適応している代わりに、外部の環境に対して無知であるように感じる。いわば内向きの価値観に強く囚われているようである。そして、その上層部の性質が中国の政策全般に現れており、その実際的な対応力を低下させているのであろう。例えエリート官僚らが前政権から引き続き業務を担当しているとしても、彼らがボスである習政権の顔色を伺いながら政策を立案している以上、どうしてもその性質に引きずられてしまうのである。

現在の中国、そして、今後の中国の動向を分析する際には、我々から見た合理性に基づくよりは、中国内部の論理に重心を置いた方が、より理解しやすくなっている。これは胡錦濤時代とは大きく違う点である。胡政権は合理性をベースにしつつ、内部政治の論理や軍部の統制失敗、民衆のガス抜きを加味すれば状況を判断することができたが、習政権の場合、よりシンプル(といえるだろうか?)に、「中国人らしく考え、中国人らしく振る舞うだろう」という風に考えるべきかもしれない。幸いにして、管理人はその基本論理の理解には自信があるし、すでに著書でも、ブログでもそうした見方をまとめてきたから、この変化に対応する準備はすでに終えているといえるだろう。


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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

tag : チャイナリスク 中国政治 中国社会 中国バブル

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No title

いつも楽しく参考にさせて貰ってます。

あのタイミングで中国が石油採掘装置を設置し、ベトナムを刺激した理由をネコさんはどうお考えですか?
色々言われてますが概ね以下の3つに意見が分かれているようですが。

①政府に対する不満を逸らすための、いつものガス抜きの一つ。
②米軍が介入してこない程度の挑発行為を繰り返し、南シナ海におけるアメリカの軍事的プレゼンスを低下させる。ひいてはASEAN諸国のアメリカに対する失望を誘う、狡猾な戦略。
③石油派閥を政権中枢から排除しようとする権力闘争の結果生じたもの。

今回のネコさんの記事を読むと、確固たる戦略に基づいたものではないのかな、と
思いますが。

No title

ねこさん、お久しぶりです。

投稿は久方ぶりですが、いつも記事は欠かさずよませてもらってます。
ねこさんの中国の将来についての知見は本当に感心させられます。
これからも記事を楽しみにしています。

質問なのですが、中国の外交政策である第一列島線の奪取はほぼ頓挫
したと考えてもよいでしょうか。それとも野心はまだ捨てていないのでしょうか?自分の勝手な見立てでは北京はとっくに捨てていても地方の軍管区(軍閥)がある程度独断先行でやっていて、それを北京が事後承認している気がするのですが。あと、中国の外交部は元々は一番の対日融和派集団だったのが尖閣のビデオ流出事件で赤っ恥をかいて、そのため日本批判の急先鋒を演じなくてはならなくなったと聞いたことがあるのですが本当なんでしょうか?

No title

>ディエムさん

①は外れ。ガス抜きのために大掛かりな設備は使いません。
②は8割以上正しい。ただし、狡猾な戦略というよりは、オバマのアメリカを舐めているからです。
 今なら力で圧せば通ると考えているのです。プーチンさんがそうしているようにね。
 実際、今のアメリカは舐められても仕方ないかと。
③石油利権を奪いつつある習政権が、より貪欲に石油資源を確保しようといている可能性は十分にありますが、権力闘争のロジックが絡んでいるかどうかまでは不明ですね。

基本的には②で、中国は強いからガンガン行くべきという反知性主義のゴリ押しと解釈しています。中国国内で権力乱用して利権を確保している政府と同じ行動パターンです。


>hiroさん
第一列島線の奪取は放棄されたわけではありませんが、彼らの実力的に実行に移すことが非常に難しい情勢です。日本が何の対策も防衛の意思も見せずにいれば実現されたのかもしれませんが、すでに本気で対中抑止を意識した以上、日本の空軍力、海軍力を抑えることは並大抵の戦力では無理です。まして、その後ろに更にアメリカまで控えているとなると、ちょっと現実的ではありませんね。

なぜ、そうなったのか。それは、中国がその傲慢(日本だけでなく他の国に対しても)な外交によって、日本を敵に回してしまい、アメリカとのパートナーシップを確立することに失敗したからです。この2国家の戦力を完全に敵側としてカウントする羽目になったのは中国最大の自爆でした。

軍部や現場の連中にとっては、騒ぎを起こして自分たちの出世に繋げたいとか利権増大に繋げたいといったレベルの動機が主要因でしょう。あるいは何も考えていないナショナリストか。

 何かはっきりした事件が理由かどうかまではつかんでいませんが、中国の外交部が今や機能不全に陥っていることは一目瞭然ですね。外交部ルートでまともに話が進んだ事例は久しく聞いていませんし、外交部のコメントなんて、「関係の悪化は、貴国の責任である。」を繰り返しているだけですよ。外交部で打開しようという意思は全く見えず、彼らの中国国内での評価は非常に低くなっている事が見て取れます。やる気もないし、誰も期待していないといっていい。

 で、本文で挙げたように、外交的常識に欠ける素人が思い付きのたわごとで自爆を重ねるという悲惨なレベルに落ちています。無能と見なされたプロフェッショナルが脇に追いやられ、素人が事態をめちゃくちゃにするという笑える(笑い事ではないけれども)図式です。しかも、政府トップが明らかにそれでいいと思っているw

 胡錦濤政権は曲がりなりにもエリート集団でしたから、迂遠に見えてもプロフェッショナルに対して一定の理解はあったと思うのです。しかし、習政権のやり方は傍から見ていると「何をモタモタやっている! ええい、どけ!俺がやってやる! ウガー!!」というレベルの思考回路に見えます。中国の叩き上げの支配層は、そういうノリでのし上がってきたので、そういう文化が政府トップレベルにも感染しているのではないかなあ。
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